冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
ソウマだ。
気がついたら、服のまま熱い風呂につかっていた。
頭の上から、ざばざばと熱帯の雨が降っていたのだ。
もうソウマはいなかった。
そのまま、湯船の中に彼は一度沈んだ。
頭まで。
音も視界も何もかも、実世界とは違う。魚たちが見ている景色が現れる。
しかし、そこは熱帯の水の中ではない。
水草もなければ、他の魚たちもいない。
ずさんな人間が管理している、ずさんな水槽がいいところだ。
生きているのは自分だけ。
上の方から、まだ雨が降っている音が聞こえる。
水の中から聞く雨。
空気が球体に見えるのも、水の中だからこそ。
沈んだまま、水面を見上げる。
波紋とさざ波が浮かんでは乱れ、割れては生まれていく。
水槽の中に、一匹だけ。
よく覚えていないが、ソウマにしゃべってしまったような気がした。
自分がメイに何をしたのか。
また一人、軽蔑される相手を増やしたに過ぎない。
だが、他の人間に軽蔑されることなんてどうでもよかった。
何も感じない。
これでもう、ソウマが構ってくることはないだろうし、メイの話を蒸し返してくることはないだろう。
ハルコもそうだ。
そういう意味では、よかったのかもしれない。
不思議と、呼吸が苦しい感じはなかった。
ざばっと湯船から顔を出す。
まだ、雨は降っていた。
「つきましたよ」
言われて車を降りたら、一瞬目眩がして―― カイトは頭を左右に振って、自分を取り戻した。
ソウマだ。
気がついたら、服のまま熱い風呂につかっていた。
頭の上から、ざばざばと熱帯の雨が降っていたのだ。
もうソウマはいなかった。
そのまま、湯船の中に彼は一度沈んだ。
頭まで。
音も視界も何もかも、実世界とは違う。魚たちが見ている景色が現れる。
しかし、そこは熱帯の水の中ではない。
水草もなければ、他の魚たちもいない。
ずさんな人間が管理している、ずさんな水槽がいいところだ。
生きているのは自分だけ。
上の方から、まだ雨が降っている音が聞こえる。
水の中から聞く雨。
空気が球体に見えるのも、水の中だからこそ。
沈んだまま、水面を見上げる。
波紋とさざ波が浮かんでは乱れ、割れては生まれていく。
水槽の中に、一匹だけ。
よく覚えていないが、ソウマにしゃべってしまったような気がした。
自分がメイに何をしたのか。
また一人、軽蔑される相手を増やしたに過ぎない。
だが、他の人間に軽蔑されることなんてどうでもよかった。
何も感じない。
これでもう、ソウマが構ってくることはないだろうし、メイの話を蒸し返してくることはないだろう。
ハルコもそうだ。
そういう意味では、よかったのかもしれない。
不思議と、呼吸が苦しい感じはなかった。
ざばっと湯船から顔を出す。
まだ、雨は降っていた。
「つきましたよ」
言われて車を降りたら、一瞬目眩がして―― カイトは頭を左右に振って、自分を取り戻した。