冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ということは、今日のうちにスタッフの誰かがしでかしたのである。

 いや、違う。

 もう分かった。

 誰か、ではない―― ほとんどの連中だ。

 だからあんなに、外野がうるさかったのである。

 カイトは後方の反応を無視して、セーブデータをロードした。

 そのまま、準備していたコマンドでラスト面まで進める。

 悲鳴のような合成音とともに、ゲームは始まった。

 オペラだ。

 肉声ではない。

 けれども女の声に聞こえた。

 駒を進め出すと、また分かったことがあった。

 戦闘画面で、キャラクターにはっきりと顔が現れたのだ。

 いままで、存在を示す駒の画像しかなかったというのに。

 しかも。

 傷もリアルに。

 何パターンも書いたのだろうか。

 このキャラクターの傷ナシ、傷アリ、腕あり、腕ナシ―― 様々なパターン画像を。

 プレイヤーキャラクターは、両腕こそあったが、顔や身体に大きな傷がいくつも刻まれている。

 殺す。

 化け物が崩れ落ちる効果音も。

 人間が負け、食われるビジュアルも。

 まるで市販のゲームのような仕上がりだった。

 いや、違う。

 こんなゲームは、どこにも販売されていない。

 いや、販売―― できない。

 誰もがたしなめるゲームではなかった。

 カイトは最終MAPを、猛然と突き進んだ。

 たとえ味方が死のうが、化け物を食らおうが、すっかり自分のゲームの中に入り込んでしまった。

 映像や音というものが、彼の右脳を突き刺していくのだ。

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