冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「お待たせ」

 今度は、車がついてからこのドアが開くまで、さっきよりも早い時間だった。

 きっと、まっすぐ向かってきたのだろう。

 ぱっと顔を上げると、メイの予想通り、あの女性だった。

 手には大きな荷物を山ほど抱えている。

「あの…」

 聞こう。

 彼女は、ついに決心した。

 この女性に、全ての謎を解いてもらおう。

 全部は解けなくても、ちゃんとメイは分からなければならないのだ。

 だから、茶色の目に力を込めた。

「ああ、ごめんなさい…ちょっとこれを下ろすの手伝ってもらえないかしら」

 なのに、彼女の方が先手を取った。
 抱えている荷物を言っているらしい。

 慌ててメイは走り寄って、その荷物を受け取る。

「ありがとう…でも、まだあるの…ちょっと待っていらしてね」

 優雅な微笑みだった。

 同性のメイでさえ見とれてしまうくらいの。

 そうして、彼女はまた部屋を出て行ってしまったのである。

「あっ…」

 我に返って呼び止めようとしたけれども、大荷物を抱えたままでは、メイの方が身動きが出来ない。

 そのまま律儀に待っていると、しばらくしてまた彼女が階段を上がってきた。

「ふぅ…中身は重くなくても、かさばるものだから」

 そうして、もう一組の荷物を持ってくると、ソファの前の机に下ろした。

 長いため息をつく唇。
 赤くて、綺麗な。

 メイは、ふっとうつむいてしまった。

 やっぱり、この姿は恥ずかしかった。

 たとえ同性相手でも。

「あら、ごめんなさい…その荷物、重かったでしょう?」

 ぼーっと抱えていた自分に気づいて、机の空いている部分に慌てて荷物を置いた。
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