冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ハルコの家に、初めて来た。

 よく掃除された室内と、落ちついた家具。

 ところどころにステンシルの可愛い箱や植木鉢が置いてあって、それが部屋の空気に温度を与えていた。

 いや。

 この家には、最初から温度がある。

 人が住むための家だ。

 大きな鉢植えが、たくさん室内に置いてあるのが目につく。

 蘭もあるし、観葉植物も。

 冬とは思えないほど鮮やかな花と、鮮やかな緑に包まれた居間だった。

「植物はみんな、あの人の趣味なのよ」

 私も嫌いではないのだけど。

 ハルコは、ほっとしたように笑いながら、ソファを勧める。

 本当に今日、彼女が現れるかどうか不安だったのだろう。

 遠慮がちにメイは座った。

「そう言いなさんな。緑に囲まれて暮らす人生が、オレ流でね」

 ソウマは、苦笑しながらも自分で自分のフォローを入れる。

 店まで迎えに来てくれたのは、彼だった。

 あの電話のすぐ後に、車はきたのだ。

 きっと、どこかで待機してくれていたのだろう。

 彼は、車の中では何も聞かないでくれた。

 他愛ない話をいくつか話してもらっている内に、この家についたのだ。

「お茶を入れるわね。おいしいお茶があるのよ」

 ハルコの微笑みを見るのは、どのくらいぶりだろうか。

 2週間くらいか。

 それでも、随分昔のことのように感じた。

「夜ご飯も食べて行ってね。大丈夫よ。遅くなってもちゃんと車で送るから」

 笑顔だが、メイがまた逃げるのではないのかという、心配そうな色がいくつも見えた。

 それもしょうがない。

 行き先も告げずに出て行って、未だに彼女が、どこに住んでいるかなども分かっていないだろうから。

 知っているのは、勤め先だけ。
< 760 / 911 >

この作品をシェア

pagetop