冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「後で聞いてみたわ…いえ、普通に聞いても曖昧に笑って逃げて答えてくれなかったのだけれども、私が泣いてしまったら、やっと言ってくれたの」

『君に手を挙げたのは…男が多かったんだ』

 ぱちくり。

 メイは、瞬きをした。

 ソウマの白状したという言葉の意味が、うまく身体に浸透しなかったのである。

 けれど。
 何となく。
 分かった。

 ソウマは―― 彼女が男に人気があることが、イヤだったのだ。

「私はね、それまで結構ソウマって大人びていると思っていたのよ。隣に越してきたその日から、ずっとそう思っていたの…でも、その時やっと、男って本当にみんな子供なんだって分かったわ」

 黙ってアマノジャクなことをして、女を独占したがる生き物なんだって。

「私は結局、侍女の役だったの。出番もたくさんあって、侍女の服は地味だったけど、綺麗だったわ。舞台の上で歌を歌いながら、お姫様にお茶を入れたの。お姫様は、かなわない恋をして泣いていたから」

 それから、何かあると必ずお茶を入れるようになったの。

 きっと、いつか重い気持ちを吹き飛ばしてくれる、そんな魔法のお茶に出会えると信じていたわ。

 彼女は、いつも出てくるお茶の秘密を話してくれたのだ。

 侍女の役をやっていなければ、こんなにハルコがお茶をいれることはなかったのだろう。

 ソウマに感謝していいのか分からなかった。

 ゴホン。

 そんな咳払いが、向こうの方から聞こえる。

「もう入ってもいいのかな…」

 入りづらそうなソウマがいた。

 メイが泣いてしまったせいで、彼が出て行ってから、かなり時間が経過していたのだ。

「あら、おかえりなさい」

 ハルコは、にっこり笑った。

「お茶でもいかが?」

 彼女が聞くと、ソウマは眉を上げるようにして、「お願いするよ」と言った。
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