冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「あきれ…ました?」

 一番最初のところから、話をしてしまったのだ。

 自分がどこに勤めていたかまで。

 それが、2人を呆れさせたと思った。

「あき…れた…」

 そう言ったのは、ソウマだった。

 やっぱり。

 メイの心は、ずんと沈んだ。
 普通の感覚の人なら、そうだろう。

 やはり、ああいう職場で働いていたというこ――

「あきれたぞ! 俺は!」

 いきなりソウマが立ち上がったので、メイはビクッとしてしまった。

「あなた…」

 ハルコが、慌ててそんな彼を止めようとする。

「2、3発…いや、5、6発は殴らないと気がすまん! あのバカを!」

 こんなに激昂しているソウマを見るのは初めてだ。
 本当に、誰かを殴りそうな勢いである。

「気持ちは分かるわ…分かるけど、とりあえずいまはダメよ。だから、座ってちょうだい」

 ハルコがいさめると、まだ怒りさめやらぬまま、どすんとソファに腰を下ろした。

 ふーっと、蒸気のようにため息を吹き出す。

 一体。

 何が、どうしたというのだろう。

 いまの2人の会話を、まったく理解できなかった。

 ソウマが誰かに怒っている。

 しかし、それは自分に向けられているものではないのだ。

 何か説明の仕方が悪かったのだろうか。

「あの…」

 ようやく割って入れる空気を見つけて、彼女は言葉を挟んだ。

「ああ、そうね…私も少し混乱しているみたい…すぐに説明出来ると思うわ…でも、ちょっと待って」


 少しではなく―― かなり混乱しているようだった。
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