冬うらら~猫と起爆スイッチ~
☆166
 メイの話の内容は、のっけから『ランジェリー・パブ』などという単語が出てくる、ショッキングなものだった。

 あの2人には、何かしら共有している秘密があって、それが大きな障害になっているのだと、薄々気づいてはいた。

 だが、予想外の方向だった。

 一日目の最初の客がカイトで、連れ去られてしまったということは、勤めていないも同然だ。

 なのに、やはり働いていたという事実だけで、彼女は随分と気に病んでいたようだ。

 別に―― メイは、遊ぶ金欲しさで勤めていたワケではない。

 借金の返済のためなのだ。

 それだけの事実が揃えば、たかがランパブなんて単語はノー・プロブレムだった。

 いや、もうカイトがホレた時点で、どんな障害もノー・プロブレムなのに。

 しかし。

 途中で一度呆れたのは、そのランパブにではなく、カイトの連れ去り方だ。

 ランパブで、現金をアタッシュケースで渡してしまったというのだ。

 その時点で、カイトがいかに彼女にのぼせていたかが分かる事実だった。

 あの男が、そんなことをする日が来るなんて。

 ただの恋ではなかった。

 一生に一度の恋、くらいの騒ぎだ。

 それじゃあ。

 ソウマはため息をつく。

 それじゃあ、あんな風になってしまうのもムリはなかった。

 ソウマが腹を立てることには、変わりないのだが。

 そして、一番呆れる言葉を聞いたのだ。


 何もしなかっただと????????
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