冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 余程ヒマに違いない。

 何かある度に、カイトの周囲に首を突っ込んでくる2人だ。

 カイトは、じろっと2人を睨む。

 そう言えば。

 療養のせいか、ムカつく、という気力さえ取り戻しているような気がする。

 体力の回復というものは、変な効果を持っていた。

「ああ、ちゃんと肉が戻ったな」

 目の前に立つと、ソウマは彼を上から下まで眺めて満足そうだ。

 人を、植物か何かと勘違いしているのだろうか。

「本当に…これならもう大丈夫ね」

 顔色もいいし、健康そうだわ。

 ハルコも嬉しそうに目を細める。

 フン。

 オレは品評会の菊じゃねぇぞ。

 カイトは、その2人を置いて一人で行ってしまおうとした。

「おっと」

 そんな彼の肩をソウマが掴む。

「はな…!」

 振り向きザマに怒鳴ろうとした瞬間、目の前に火花が散った。

 顔に、思い切り平手を張られたのだ。

「グーでなかったのは、退院祝いだからだ…まだ残っている分があるが、貸しておいてやろう」

「何しやがんだ!」

 飄々と答えられても、ちっともカイトにはワケが分からない。

 何故、いきなり顔面張られなければならないのか。

「まあ、そんなに怒鳴れるなら、元気ね」

 にこにこしながらハルコが近づいてくる。

 しかし、近付いてくるだけでは終わらなかった。

「……!!!!!」

 カイトは飛び上がった。

 ハルコが、脇腹の肉をつねったのである。

 爪の先で思い切り。
< 772 / 911 >

この作品をシェア

pagetop