冬うらら~猫と起爆スイッチ~

01/09 Sun.-1

□168
 日曜日の朝。

 珍しく、カイトは寝坊した。

 重い身体をむくりとベッドから起こす。

 正月も退院早々働き出し、朝早くから夜遅くまでの生活を繰り返していたツケが、ここでどっと出たのだ。

 憎らしいことに、身体が今日は休日だと覚えていたようだ。

 昨日の土曜日までは、いつも通りに動けたというのに。

 退院してから、身体だけがとにかく日常生活を送ろうとしてしまう。

 寝て、起きて、仕事をして、時々食事らしきものをして、また寝て。

 悪い夢はみなくなった。

 それは、精神的に強くなった、とか元に戻った、とかいうことではない。

 傷口に爪を立てる存在に、フタが出来るようになったのだ。

 カギも何もついていない箱の中に、入れておけるようになっただけ。

 ふとしたはずみにも開いてしまったら、彼はいつでも、簡単に入院前のあの惨状に逆戻りすることができるだろう。

 小康状態のようなものである。

 幸い。

 ここまで、ネクタイ仕事を避けることが出来た。
 それが、小康状態の原因だ。

 もし、ネクタイを締めろと言われたら――

 カイトは、そのことを考えないようにした。

 仕事…行くか。

 まるでモルヒネを求めるように、カイトは仕事をする。

 昨日、帰ってきてそのまま寝てしまったので、身体も服も変な重さがあった。

 のろのろと風呂場に向かい、そのイヤな重みを洗い流す。

 低温のシャワーの湯が、ぬるくカイトの肌を叩いた。

 そのまま、ぼんやりとしている。

 風呂場は綺麗だ。
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