冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 この人は。

 カイトの部屋のバスルームに、無許可で入れる人なのだ、と。

 バスルームの中のものを、全部知っている人なのだと思ったら、ぶわっと熱い塊が、胸の内側からわき上がってきた。

 何で。

「いただけません…そんな」

 鼻がツンと痛むような感触に襲われる。
 慌ててうつむいた。

 何で。

 苦しかった。

 自分が、脱衣所の後かたづけをしようとして叱られたことが、ばっとフラッシュバックした。

 ハルコがきっと片付けているのだ。

 カイトのものを全て。

 だから、叱られたのだ、と。

 全部彼女がやっているものに、メイは勝手に手を出してしまったのだ。

 全身がピリピリした。

 泣きそうになる時、いつもそういう感触になる。

 ぐっとこらえる。

 泣く理由が見つからなかったからだ。

 カイトは若いけれども、もう1人の態度やこの家を見れば、いい仕事をして高給を取っているのが分かる。

 そんな彼に、ふさわしい人がいてもおかしくないかった。

 最初から分かっていることではないか。

 場違いという痛みが、一気に千の針になる。
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