冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 何もかも、間違いない。

 ぱっと―― カイトの脳にまで、その血液が巡った。

「ちょっと来い!」

 その腕をひっつかむ。

 そして引っ張った。

 触れられる存在だ。温度もある。

 カイトの大きな手では、指の余る手首だ。

 隣のダイニングにまで、とにかく引っ張る。

 彼女がそこに実在するのは分かった。

 しかし、次に出てくるのは、『何故?』だ。

 何故彼女が、ここにいるのか。

 ダイニングまで連れてきて手を離す。

 とにかく、この一番大きな『何故?』のナゾを解いて欲しかった。

 向き直って、その質問を言いかける。

 それより先に。

「すみません、私、仕事中なので…!」

 ペコリ。

 メイは、頭をぱっと下げると、調理場の方に駆け戻ってしまったのだ。

 仕事だと?


 カイトは、ワケが分からずに―― その場に立ちつくしてしまった。
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