冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カイトは、がばっと身体を起こした。

 ベッドの上からドアを見る。

「メイです」

 他の可能性にすがる前に、ドアの向こうからそんな声が聞こえた。

 間違いのない相手が、そこにいるのだ。

 そっと。

 ドアが開いた。

 呆然とするより他ない。

 彼女は、わざわざこの部屋に何をしにきたのか。

 そうか。

 この部屋の掃除だ。

 カイトはそう思った。

 他のところが終わって、きっとここまでたどり着いたに過ぎないのだ。

 ただそれだけ。

 なのに。

 カイトは目を疑った。

 メイの姿のせいだ。

 さっき、彼が目撃したシルエットとは違ったのである。

 もうジーンズではなかった。

 花柄のロングスカートにジャケット。
 手にはコートという出で立ちだった。

 そして、彼女は言った。

「仕事が終わりましたので、これで失礼させていただきます」

 ぺこり。

 落ち着かないような動きで、彼女は頭を下げた。

 ムカッとしたものが胸をよぎる。どんな状況であろうとも、メイに頭を下げられるのはイヤだったのだ。

 今ですら、そうだった。

 しかし、わざわざ仕事終わりの報告に来た彼女を、見つめるしかできない。

 どんな反応も返せなかった。
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