冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
大通りに出ると、夕方の渋滞が始まりかけていた。
日曜日でも、その渋滞は変わらない。
仕事に行った連中か、そうでない連中かの比率が変わるだけである。
どこに行くか分からないバスが、何台も通り過ぎていく。
バス停には、他の人間もいた。
2人、黙ってそこに立った。
メイは、さかんに時計を気にするような、落ち着かない動きだ。
カイトの方だけは見ない。
きょろきょろと、バスがそこまで来ているか確認するばかりだ。
駅に向かうバスが止まった時、ようやくちらっとカイトの方を見た。
多分、このバスに乗ると言いたいのだろうが、彼女はすぐに視線をそらす。
メイに続いて乗り込むと、一番後ろの横長い席が空いていた。
彼女はその席に向かい、奥の窓の方に腰かける。
カイトは、側に座ることは出来なかった。
一人分空けて、真ん中に座る。
うるさい女子高生が、前でペチャクチャペチャクチャしゃべっていた。
くだらない内容だ。
メールがどうの、男がどうの。
カイトは顔を顰めたまま、その声を聞かないようにした。
それよりも、神経を全部窓辺のメイに向ける。
彼を、どこに連れて行こうとしているのか。
こんな排ガス臭いバスの中に連れ込んで、足元だけが熱くなるイヤな暖房に焼かれながら―― どこまで揺られればいいのか。
うるせぇ。
メイに意識を向けたいのに、女子高生の高い笑い声がカンに障って邪魔をした。
イライラする。
ちらり。
盗み見ると、彼女は外を見ていた。
窓ガラスに、その表情が少しだけ反射している。
唇を少し開いて、また閉じて。
深呼吸のようなため息をついたのまでは分かった。
人が乗る。
降りる。
どんどん外は暗くなって、ゾウの周囲にハイエナが群がって倒そうとするかのように、バスは渋滞の乗用車に取り囲まれた。
床の下の大きなエンジンが、雄叫びをあげている。
次は終点の、駅前バスターミナルだと告げられた。
降りる以外になかった。
大通りに出ると、夕方の渋滞が始まりかけていた。
日曜日でも、その渋滞は変わらない。
仕事に行った連中か、そうでない連中かの比率が変わるだけである。
どこに行くか分からないバスが、何台も通り過ぎていく。
バス停には、他の人間もいた。
2人、黙ってそこに立った。
メイは、さかんに時計を気にするような、落ち着かない動きだ。
カイトの方だけは見ない。
きょろきょろと、バスがそこまで来ているか確認するばかりだ。
駅に向かうバスが止まった時、ようやくちらっとカイトの方を見た。
多分、このバスに乗ると言いたいのだろうが、彼女はすぐに視線をそらす。
メイに続いて乗り込むと、一番後ろの横長い席が空いていた。
彼女はその席に向かい、奥の窓の方に腰かける。
カイトは、側に座ることは出来なかった。
一人分空けて、真ん中に座る。
うるさい女子高生が、前でペチャクチャペチャクチャしゃべっていた。
くだらない内容だ。
メールがどうの、男がどうの。
カイトは顔を顰めたまま、その声を聞かないようにした。
それよりも、神経を全部窓辺のメイに向ける。
彼を、どこに連れて行こうとしているのか。
こんな排ガス臭いバスの中に連れ込んで、足元だけが熱くなるイヤな暖房に焼かれながら―― どこまで揺られればいいのか。
うるせぇ。
メイに意識を向けたいのに、女子高生の高い笑い声がカンに障って邪魔をした。
イライラする。
ちらり。
盗み見ると、彼女は外を見ていた。
窓ガラスに、その表情が少しだけ反射している。
唇を少し開いて、また閉じて。
深呼吸のようなため息をついたのまでは分かった。
人が乗る。
降りる。
どんどん外は暗くなって、ゾウの周囲にハイエナが群がって倒そうとするかのように、バスは渋滞の乗用車に取り囲まれた。
床の下の大きなエンジンが、雄叫びをあげている。
次は終点の、駅前バスターミナルだと告げられた。
降りる以外になかった。