冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「ここ、すごくおいしいんですよ」
のれんの前で、そう言われた。
居酒屋だ。
カイトは、目をこらした。
やっぱり居酒屋だった。
メイを見ると、がらっと扉を開けて入っていくところだった。
彼の驚きに、気づいてもいないようだ。
どうして、彼女がこんな店を知っているのか不思議だった。
確かに、夕食を一緒に―― そんな風に言われたのだが、まさか居酒屋に連れてこられるとは思わなかったのだ。
「はい、いらっしゃ…あら!」
中から、明るい女性の声が聞こえる。
カイトも、ずさんに頭を下げてのれんをくぐった。
「こんばんわ、空いてますか?」
入ってすぐのところで止まっている彼女の後ろ姿を見る。慣れた感じだ。
ここにも、カイトの知らないメイが溢れていた。
掃除をしているのを見た時と、同じような感触だ。
「いま、店を明けたばかりだから、見ての通りよ… 一人? って…ああ」
女将らしい若い女が、後ろに立っているカイトを見た。
眉を上げて、一瞬好奇の色を見せた後、にこっと笑う。
カイトは目をそらした。
「カウンターがいいかしら? どうぞ、こっちの席が静かよ、きっと」
白い手が2人を案内する。カウンターの向こうの端の席だ。
メイが奥に入った。
そして、彼女はコートを脱ぐ。
その姿をじっと見ていた。
「ほら、あなたもそんな野暮なコートは脱いで脱いで」
うっかりすると、バシバシ叩かれてしまいそうな勢いで女将が言う。
その声に我に返って、彼も粗雑な動きでコートを脱いだ。
「ここ、すごくおいしいんですよ」
のれんの前で、そう言われた。
居酒屋だ。
カイトは、目をこらした。
やっぱり居酒屋だった。
メイを見ると、がらっと扉を開けて入っていくところだった。
彼の驚きに、気づいてもいないようだ。
どうして、彼女がこんな店を知っているのか不思議だった。
確かに、夕食を一緒に―― そんな風に言われたのだが、まさか居酒屋に連れてこられるとは思わなかったのだ。
「はい、いらっしゃ…あら!」
中から、明るい女性の声が聞こえる。
カイトも、ずさんに頭を下げてのれんをくぐった。
「こんばんわ、空いてますか?」
入ってすぐのところで止まっている彼女の後ろ姿を見る。慣れた感じだ。
ここにも、カイトの知らないメイが溢れていた。
掃除をしているのを見た時と、同じような感触だ。
「いま、店を明けたばかりだから、見ての通りよ… 一人? って…ああ」
女将らしい若い女が、後ろに立っているカイトを見た。
眉を上げて、一瞬好奇の色を見せた後、にこっと笑う。
カイトは目をそらした。
「カウンターがいいかしら? どうぞ、こっちの席が静かよ、きっと」
白い手が2人を案内する。カウンターの向こうの端の席だ。
メイが奥に入った。
そして、彼女はコートを脱ぐ。
その姿をじっと見ていた。
「ほら、あなたもそんな野暮なコートは脱いで脱いで」
うっかりすると、バシバシ叩かれてしまいそうな勢いで女将が言う。
その声に我に返って、彼も粗雑な動きでコートを脱いだ。