冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「ずっと、こうしたかったんです…ずっと、ずっと…ずっと」

 胸が、きゅーっとした。

 身体がわなないて、必死で止めようとしたら、カイトの手を強く握りしめていた。

 でも、それでも止まらない。

 一度心をあふれ出させたら、目頭がかぁっとなって、喉が詰まって――でも、まだ全然伝え終わっていないのだ。

「ずっと、ずっと…ずっと、好きで」

 この。

 手の向こうにいるのがカイトだ。間違いなく彼なのだ。

 会いたくて、会いたくてしょうがなかった相手だ。

 ぎゅっと手を握ってしまう。彼の存在を、もっとはっきりと分かりたかった。

 喉の奥に、熱い塊がある。それが、迫り上がってきた。

 ぐっとこらえる。

 強く、彼の手を握って我慢する。

「あなたのことが、ずっと、ずっと好きで…好きで…きで…で…」

 でも。

 ダメだった。

 言葉の途中で、涙がぼろぼろと溢れだしてしまった。

 身体中が熱くなって、こんなに好きだと伝えているのに、胸が苦しいばかりなのだ。

 全部吐き出してしまえば、きっともっと楽になると思ったのに。

 だが、余計に苦しくなっていくばかりだった。

 ひっく、としゃくりあげる。

 もう。

 この手を離したくなかった。

 離したくないと思ったら、余計に涙が溢れてくる。

 このまま、彼を連れ去ってしまいたかった。
 自分の側にいて欲しかった。

 私の側に…いて。

 お願い、ずっとここにいて。

 手をふりほどかないで。

 ずっと、好きでいさせて。

 身体中から、カイトを好きな気持ちが溢れ返る。

 まだ、伝えていない言葉がたくさん転がり出てくるのに、彼女の唇は、もう動かなかった。

 だから、こんなに苦しいのだ。

 まだ、全然言葉が足りなかったのだ。
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