冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□175
 その手を、強く握り返す。

 ぐっと。

 熱い彼女の手を、強く強く握った。

 彼女は何と言ったか。

 聞こえてはいたのだ。

 言われた言葉が何なのか。

 しかし、それは信じられない内容だった。

 そんな可能性があるなんて、一番最初に撃ち殺してしまっていた。

 それなのに。

 ずっと―― 何度も、彼女はそう言った。

 ずっととは、いつのことからなのか。

 3日か。

 10日か。

 それとも。

 まさか。

 カイトは、奥歯を噛みしめた。

 一度強く目を閉じると、涙のカタマリが落ちたのが分かった。

 まさか。

 ずっととは、一緒に暮らしていた時間も含まれるのか。

 信じられなくて、カイトは頭を打ち振ろうとした。

 そんな都合のいい話が、あるはずがなかった。

 だが。

 この手を、離せない。

 一度しっかり握ってしまったら、もう絶対に離したくない自分がいた。

 今のカイトは、欲しいものをデパートで握りしめて離さない子供と一緒だ。

 ここで離してしまったら、もうそれとは一生出会えないような気がする。

 イヤだ。

 どんな理屈かとか、自分が彼女に何をしたかとか、この時のカイトは吹っ飛んでしまっていた。
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