冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
とにかく、この手を離すのがイヤだったのだ。
強く握っている手が、震えているような気がする。
アンテナを彼女に向けると、メイが泣いているのが分かった。
震えているのではなくて、しゃくりあげた瞬間の感触だったようだ。
泣くな。
胸にヒビが入る。
いや、もう既に半分抉られていた胸だ。
残った分もひびだらけだ。
固く岩のように硬化していた胸に、彼女の涙のしずくがぽたぱたと落ちて色を変えていく。
夏のコンクリートが、夕立をそんな風に受け止めるみたいに。
泣くな。
身体が、カァッとする。
その色を変えた心から、溶岩が溢れだしてくるのだ。
もう死んだと思っていた、彼女へのたくさんの衝動がわきあがってくる。
どれ一つとして、死んでなどいなかった。
宮殿のガーゴイルのように、石になっていただけだったのだ。
石化の魔法が、解ける。
解けた途端。
彼が、ずっとこれまで押さえつけていた衝動が溢れる。
手じゃ。
手なんかじゃ、全然足りないのだ。
ふりほどいた。
気づいたら―― 抱きしめていた。
ずっと。
それこそ、本当にずっとこうしたかった。
何度この衝動をこらえただろう。
彼女が家にいる間、あらゆる場面で抱きしめたい気持ちが溢れていた。
だが、それはしてはいけないことだった。
だからカイトは、ずっとその気持ちを押さえつけてきたのだ。
そんなことをすれば、きっと拒まれる。
拒まれなければ、それは借金のせいで抵抗できないのだと。
しかし、どうしてだ。
彼女は、自分からまた戻ってきた。
カゴから出したというのに、鳥は帰ってきたのだ。
猫にしてみれば、信じられない現状である。
猫の頭の上にとまった。
そして、歌った。
抱きしめた。
とにかく、この手を離すのがイヤだったのだ。
強く握っている手が、震えているような気がする。
アンテナを彼女に向けると、メイが泣いているのが分かった。
震えているのではなくて、しゃくりあげた瞬間の感触だったようだ。
泣くな。
胸にヒビが入る。
いや、もう既に半分抉られていた胸だ。
残った分もひびだらけだ。
固く岩のように硬化していた胸に、彼女の涙のしずくがぽたぱたと落ちて色を変えていく。
夏のコンクリートが、夕立をそんな風に受け止めるみたいに。
泣くな。
身体が、カァッとする。
その色を変えた心から、溶岩が溢れだしてくるのだ。
もう死んだと思っていた、彼女へのたくさんの衝動がわきあがってくる。
どれ一つとして、死んでなどいなかった。
宮殿のガーゴイルのように、石になっていただけだったのだ。
石化の魔法が、解ける。
解けた途端。
彼が、ずっとこれまで押さえつけていた衝動が溢れる。
手じゃ。
手なんかじゃ、全然足りないのだ。
ふりほどいた。
気づいたら―― 抱きしめていた。
ずっと。
それこそ、本当にずっとこうしたかった。
何度この衝動をこらえただろう。
彼女が家にいる間、あらゆる場面で抱きしめたい気持ちが溢れていた。
だが、それはしてはいけないことだった。
だからカイトは、ずっとその気持ちを押さえつけてきたのだ。
そんなことをすれば、きっと拒まれる。
拒まれなければ、それは借金のせいで抵抗できないのだと。
しかし、どうしてだ。
彼女は、自分からまた戻ってきた。
カゴから出したというのに、鳥は帰ってきたのだ。
猫にしてみれば、信じられない現状である。
猫の頭の上にとまった。
そして、歌った。
抱きしめた。