冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「バカや…!」

 また、抱きしめた。

 そんなワケあるはずがない。
 カイトが、彼女を抱くのをイヤがるなんて、絶対にありえないことだ。

 だが、きっと乱暴になる。

 この衝動を、抑えられるはずがなかった。

 優しくしてやる自信なんて、本当に全くなかった。

 それでもいいのか。

 本当にいいのか。

 でも、もう―― 止められそうになかった。

 メイは、彼の爆弾のスイッチを入れてしまったのだ。

 がむしゃらに、彼女を抱きしめた。

 この腕を離したくない。

 いや、もう二度と自分の側から離したくない。

 メイの身体を抱え上げて、固いパイプベッドに降ろす。

 しかし、首に回された腕は解かれず、そのまま彼女の上に乗り上げる形になってしまった。

 頬に、柔らかくて冷たい髪の感触がある。

 まだ、腕を離してくれなかった。

 その強い力。

 胸が、締め付けられる。

「優しく…できねぇ」

 その耳元で、苦しい声を出した。

 ぜってー、無理だ。

 どんなに、彼女が大事で大事で泣かせたくなくても、このままじゃ自分が間違いなく敵になる。

 こんなに愛しい存在を前に、穏やかな気持ちになれるはずがなかった。

 メイは、首を横に振った。

 何度も何度も、涙のまま。

「ひどくて…いいの。あなたがそこにいるって、私に教え…」

 全部聞かなかった。

 こらえきれず、噛みつくように口づけてしまったから。
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