冬うらら~猫と起爆スイッチ~

『でも…そうだったんですね』

 何度目かの言葉。

 ブチッ。

 余計なものを挟みたがる彼女の言葉に、ついにカイトはキレた。


「おめーは、オレの言う通りにすりゃあいいんだよ! とっととやれっ!」


 その怒鳴りは。

 社長室の外の秘書にまで届いていた。

 秘書の女性が、びくっと席で飛び跳ねたのを、カイトは知らない。

 もう、ハルコは同じ言葉を繰り返さなかった。

 彼の怒鳴りがこたえてもいない様子で、従順なフリをして話を進める。

 しかし、全然従順でないような気がしてしょうがなかった。

 クソ、クソッ。

 電話を叩き切りながら、カイトはムカムカしていた。

 朝から、シュウといいハルコといい、どうしてこんな無様な姿を見せなければならないかと思うと、ハラが立ってしょうがない。

 怒った余り、企画会議についてシュウが来たのすら分からなかった。

「この書類ですが…」

 もしかしたら、隣の副社長室まで、怒鳴りが聞こえていたかもしれない。

 しかし、まったくもってそんなこともおくびにも出さず、シュウは書類を差し出しながら話し始める。

 その鉄面皮ごと、書類を引き裂いてやりたかった。
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