冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●181
 朝、メイが目を覚ましたら、本当にすぐ側に彼の顔があった。

 それを見た瞬間に、心臓が飛び出しそうになるくらい驚いたのだ。

 一瞬で、眠気が吹っ飛んだ。

 彼女の買ったパイプベッドは、非常に狭い。

 だから、こんな風に強く密着していないと、すぐに転げ落ちてしまうだろう。

 まだ、奥の方のカイトはいい。

 向こう側が壁だからだ。

 しかし、無防備な側にいるメイは、よくも落ちなかったものだと、あとで改めて驚いた。

 それは――彼の腕が、ぎゅっと彼女を抱え込んでいたから。

 眠っても、カイトは離してくれなかったのだ。

 私…。

 昨日のことが呼び戻される。

 玉砕覚悟で告白をした。

 それは覚えている。

 けれども。

 カァッ。

 メイは、身体が熱くなるのを感じた。

 まさかその夜に、彼とこんなことになるとは思ってもみなかったのである。

 あの時は、とにかく一生懸命で、冷静になって考えられなかったが、朝日が彼女を我に返したのである。

 カイトを起こさないように、そっと彼の腕から抜け出した。

 素肌には、余りに冷たい空気が襲いかかってくるので、急いで身支度を整える。

 彼が目を覚ました時に、まだ自分が裸のままだったら、どう対応していいか分からない。

 カイトの目の前で、着替えをするハメにも陥りたくなかった。

 こうして服を着込んでさえいれば、もう少し普通の反応が出来るのではないかと思ったのだ。

 ズキンと、身体に痛みが走った。

 何か一つ大きなアクションをすると、そうして身体がカイトを思い出すのだ。

 メイは、また赤くなってしまった。
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