冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「きゃっ!」

 メイは、びっくりして身体ごと向こうを向いた。

 まさか、彼が全裸で起き出してくるとは思ってもみなかったのである。

 向こうも、そんな自分にやっと気づいてくれたのか、服を着ているような音がしている。

 ベルトがガチャガチャと音を立て、彼女を恥ずかしがらせた。

 しかし、ホッとする。

 カイトの行動にこそ驚いたが、表情自体には後悔しているようなものは見えなかったからだ。

 しかし、ホッとするでは済まなかった。

 あっと思った時には、背中から抱きすくめられていたからだ。

 身動き一つ出来ないくらい、強い素肌の腕だった。

 それに、ぎゅうぎゅうに抱きしめられる。

 驚き、慌てた。

 こんな反応が来るとは、想像だにしていなかったのだ。

 まさか、冷静になるはずの、朝日の中で抱きしめられるなんて。

「あのっ…あっ…危ないです! お鍋熱いですし…」

 パニクったまま、メイは声をあげた。

 目前では、みそ汁の鍋がガスにかけられているのだ。

 けれども、この時はそんなことよりも――やはり、恥ずかしさと驚きが勝っていた。

 いやなのではない。

 ただ、こんな風に誰かに抱かれるのには、全然慣れていないのだ。

 しかし、彼女の言葉は余計に腕に力を込めさせるだけだった。


 みそ汁が煮立っても、彼は離してくれなかった。
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