冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 だから――とりあえず、まず一番身近な未来から埋めていこうと思った。

 顔をあげる。

 涙腺はおさまってくれようだった。

「今日は、ゆっくりして行けます? もしそうなら、夕ご飯、腕を振るいますね」

 食器を買って、夕食の買い物をして。

 今日、彼の仕事がなければいいのだけれども。

 メイは、そう願った。

 しかし。

 いきなり、カイトの表情が固く強張ったのだ。

 え?

 何か、自分が悪いことを言ってしまったのかと思った。

 けれども、カイトの口はしゃべるためには開かず、物凄い勢いで朝食をたいらげだす。

 呆然と見ている間に食べ終わり、茶碗の上に箸をバンと置くと立ち上がったのだ。

 そのまま、ボタンがすっ飛んでしまっているシャツをばっと着込み、コートをひっつかむと――怒ったような気配のまま、彼はアパートを飛び出して行ってしまった。

 え?

 え? え? え???

 何で?


 メイは箸を持ったまま、取り残されてしまった。
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