冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 きっと、何か急ぎの用事があったんだわ。

 メイは無理にそう思って、朝食を終えた。

 後かたづけに入る。

 しかし、ため息をついている自分がいて。

 はっとそれに気づく度に、彼女はふるふると頭を左右に振った。

 冷たい水で仕事を終えて、それから部屋の掃除を始める。

 ああ。

 シーツ、洗わなきゃ。

 ベッドの方に戻る。勿体ないのでストーブを消して。

 そして、ベッドに触れた。

 まだ、そこは彼の体温を覚えているような気がする。

 いや、覚えているのはメイだ。

 彼女の記憶に、しっかりと全てが残っていた。

 でも。

 いま、彼はいない。

 メイは、それを考えないようにして、シーツを持って浴室に向かった。

 洗濯機なんかは、買っていない。

 だから、お風呂場で手洗いだった。

 洗濯を始める。

 朝のうちに洗って干しておかないと、今夜使えないからだ。

 予備を買おうかと思ったのだが、無駄遣いのような気がして、後に引き延ばしていた。

 ザブザブ。

 カイトは、本当に気持ちをしゃべらない人だった。

 行動の方が、遥かに先に突っ走っていく。

 そんな彼が、昨夜、メイに好きだと言ったことは、よく考えれば、物凄いことだったのだろう。
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