冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 それで、気持ちはお互い通じた――ハズだった。

 じゃあ?

 メイは、洗いかけのシーツを持ったまま、ぼんやりとしてしまった。

 これから、恥ずかしい言葉ではあるが『恋人』として、スタートするのではないのだろうか。普通は。

 もしかしたら、それは自分一人の思い過ごしなのだろうか?

 可能性の2番目の芽が、むくむくと地面から生えてくる。

 そうなのだ。

 カイトに、『普通』なんて言葉を、当てはめてはいけなかった。

 いままで、彼がどんなすっ飛んだことをしてきたか、考えれば分かるではないか。

 ということは。

『好き』という気持ちと、『恋人』や『これから』という言葉は、つながっていないのかもしれない。

 好きは好きだが、それとこれとは別――のような考え方だったら。

 ああ、でも。

 メイは、ゆっくりとシーツを洗うのを再開した。

 冷たさに、指の先がジンジンとするが、そのまま仕事を続ける。

 どうなってもいいのだと、昨日自分は覚悟したはずだった。

 だから、気持ちが通じただけでいいのだ。

 大体、通じる予定ではなかった。

 きっと玉砕して、今頃泣きはらした目で、起きてきている予定だったのだ。

 それからしたら、雲泥の差である。

 そうよね。

 気持ちが通じたんだもの。

 それだけで――


 バターン!!!!!!


 メイの思考は、最後まで行けなかった。

 物凄い音が、後方で炸裂したからである。
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