冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 な、何????

 メイは、シーツの端っこを持ったままビクッとした。

 ヤクザの出入りのような勢いだったのだ。

 どうやら、誰かがドアを物凄く乱暴に開けて、押し入って来たようだ。

 カギはかけていなかった。

 もしかしたら、彼が帰ってくるかもしれない。

 そんな、一抹の希望があったせいだ。

 硬直していた彼女の耳に、不躾な足音が響き回る。

 すごい勢いだ。

「おい!」

 そう――声が聞こえるまで、本当にメイは動けなかった。

 あ!

 ぱっとシーツを手から離す。

 そして立ち上がった。

 たたっと、浴室から飛び出そうとした時、向こうからドアが開いた。

 カイトだ。

 彼が、帰って来たのである。

 あ。

 メイは、自分が言葉を忘れてしまったような気持ちになった。

 この気持ちを、どうやってカイトに伝えたらいいか分からないのだ。

 でも、本当に嬉しかった。

 可能性の2番目が消えただけでも、本当に嬉しかったのだ。
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