冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カイトは家に帰り着くなり部屋に駆け込み、ボタンの吹っ飛んだシャツを放り投げ、そこらにある新しい服を着込んだ。

 着込みながら、ガタガタと机の引き出しを開ける。そして必要なものを掴む。

 キーを取って、今度は自分の車で飛び出して行った。

 家についてから出ていくまで、5分以内の出来事だった。

 カイトは、役所に飛び込んだ。


 休みだった。


 その瞬間、彼は自分の車を役所に突っ込ませたい衝動にかられたのである。

 一番大事な時に、公務員連中は休んでいるのだ。

 当たり前である。今日は祝日なのだから。

 ここで諦めればよかったのに、カイトはそうできなかった。

 どうしても、明日に回したくなかったのだ。

 いますぐ、必要だったのである。

 そんな時。

 役所の建物の中で、何かが動いた。

 よく見れば、人がいるのが分かった。

 カイトは、車から降りるやそっちに向かって駆ける。

 正面玄関ではない、脇にある建物だ。

 そのドアは、少し開いたままになっている。

 カギがかかっていないのだと、カイトに教えた。


「おい! 誰かいねーのか!」


 そのドアを蹴り開けながら、カイトは怒鳴った。

「うわぁぁぁ!!!!」

 彼の怒鳴りに、思い切りびっくりしましたという悲鳴があがる。

 声の方を向くと、守衛室のような部屋があった。

 ちいさなガラスの窓があって、そこを開けて話ができるようになっている。

 カイトは、ばっと手を伸ばして小窓を開けた。
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