冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「もう…」
ぼそっと。
重い口を、カイトはようやく開く。
自分が何を言おうとしているのか、よく分かっていなかった。
「もう…離れちまうのなんか…まっぴらだ」
苦しい顔を見られたくなくて、顔を横に向けた。
あんな。
彼女を傷つけたり、スレ違ったり、自分を憎んだり。
もう二度と、そんなことはイヤだった。
それをどうしたら、彼女に伝えることが出来るのか。
いま、カイトが言ったようなセリフでは、やはりうまく伝えられた気がしない。
もっとうまく伝える言葉が、この世にはあるハズなのだ。
それなら、たった今だけでいいから、彼に宿って欲しかった。
なのに、いままで彼があんまりムゲにしてきたものだから、今更言葉の神さまは振り返ってくれなかった。
つれなく遠くに行ってしまっただけである。
クソッッ!
思い一つきちんと伝えられなくて、カイトは苛立った。
これでは、彼女に拒まれてしまうかもしれない。
また離れて暮らす日々を、続けなければいけないかもしれないのだ。
そんな彼の横で、メイが動いた。
しかし、用紙の中身を埋め始めたワケではない。
立ち上がって、台所の方に行ってしまったのだ。
カイトは目を見開きいた。
動けない。
いまの彼女の行動が、一体どういう意味を持つのか――詳しく理解したくなかったのだ。
そんなことをしてしまったら、カイトは足元から壊れていきそうだったのだ。
壊れ出す前に。
彼女は帰ってきた。
ハッと、視線を上げる。
メイが、もう一度ちゃぶ台の前に座るところだった。
手には――ボールペンを持っていた。
彼は、何も書くものを渡していなかったのだ。
「もう…」
ぼそっと。
重い口を、カイトはようやく開く。
自分が何を言おうとしているのか、よく分かっていなかった。
「もう…離れちまうのなんか…まっぴらだ」
苦しい顔を見られたくなくて、顔を横に向けた。
あんな。
彼女を傷つけたり、スレ違ったり、自分を憎んだり。
もう二度と、そんなことはイヤだった。
それをどうしたら、彼女に伝えることが出来るのか。
いま、カイトが言ったようなセリフでは、やはりうまく伝えられた気がしない。
もっとうまく伝える言葉が、この世にはあるハズなのだ。
それなら、たった今だけでいいから、彼に宿って欲しかった。
なのに、いままで彼があんまりムゲにしてきたものだから、今更言葉の神さまは振り返ってくれなかった。
つれなく遠くに行ってしまっただけである。
クソッッ!
思い一つきちんと伝えられなくて、カイトは苛立った。
これでは、彼女に拒まれてしまうかもしれない。
また離れて暮らす日々を、続けなければいけないかもしれないのだ。
そんな彼の横で、メイが動いた。
しかし、用紙の中身を埋め始めたワケではない。
立ち上がって、台所の方に行ってしまったのだ。
カイトは目を見開きいた。
動けない。
いまの彼女の行動が、一体どういう意味を持つのか――詳しく理解したくなかったのだ。
そんなことをしてしまったら、カイトは足元から壊れていきそうだったのだ。
壊れ出す前に。
彼女は帰ってきた。
ハッと、視線を上げる。
メイが、もう一度ちゃぶ台の前に座るところだった。
手には――ボールペンを持っていた。
彼は、何も書くものを渡していなかったのだ。