冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「とにかく、お風呂に入ってさっぱりしてらっしゃい。それから着替えて…」

 ハルコの言葉に押されそうになるけれども、メイは足を止めて、彼女を見る。

「あの…お聞きしたいことが…」

 たくさん。

 それはもう、自分でも数え切れないくらいたくさんあるのだ。

 しかし、彼女はシッと人差し指を唇にあてた。

「お風呂と着替えを済ませてきたら、何でも答えてあげるわ」

 ね?

 ダメ押しまでされて――メイは、また脱衣所に逆戻りだった。

 いろんな荷物と一緒に。

 シャツのボタンに指をかけると、昨夜、このボタンを止めた時のことを思い出す。

 同じこの場所で。

 彼はひっくり返した衣服の中から、必死に着替えを探してくれた。

 何故?

 思ったら、また視界がぼやけた。

 慌ててボタンを外す。

 シャツを脱ぎ捨てると、バスルームに飛び込んだ。

 コックをひねって、シャワーの雨を頭からかぶる。

 冷たかった。

 急激な温度変化に、頭がズキズキと痛むくらい。

 次第に、水はぬるくなっていき、最後は温かくなった。

 けれどもメイは、そのまましばらくずぶ濡れになりつづけていた。
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