冬うらら~猫と起爆スイッチ~
☆
そして――本当に、台風だった。
うるさいチャイムの連打に、ソウマは玄関に急き立てられた。
そして、ドアを開けたのだ。
相手がカイトであるかを確認するより早く、白い紙が突きつけられた。
「書け!」
声は、紛れもなくカイトのもの。
最初は、借金の証文か何かだと思った。
一瞬のことで、用紙の内容まで読めなかったからだ。
突き出されて揺れる紙を、じっくりと眺める。
『婚姻届』
彼の国語力に問題がなければ、用紙にはそう記載してあった。
婚姻?
オレとお前じゃ結婚は出来んぞ――そう茶化そうと思ったが、すでに「夫になる者」のところも、「妻になる者」のところも、文字が埋められていたのだ。
カイトと。
ソウマは、紙を乗り越えてカイトを見た。
全身から、パワーと勢いを感じる。
いつもの彼だった。
いや、正確に言えば、ボロボロになる前のカイトと同じ生命体だ。
その生命体を視線で乗り越えると、彼女がいた。
目が合うと、混乱したような表情のまま、ぺこっと軽く頭を下げられる。
ああ。
全部分かった。
分かったやいなや、ソウマは顔が緩んでしまう。
ようやく――彼らは、心を通じ合わせることに成功したのである。
正月明けから、メイが仕事に行っているのは知っていた。
何しろ、その世話をしたのはハルコであり、承諾したのはシュウなのだから、ソウマの耳に情報が入ってこないワケがない。
仕事に行き始めてから一週間くらいか。
それで、この有り様なのである。
そして――本当に、台風だった。
うるさいチャイムの連打に、ソウマは玄関に急き立てられた。
そして、ドアを開けたのだ。
相手がカイトであるかを確認するより早く、白い紙が突きつけられた。
「書け!」
声は、紛れもなくカイトのもの。
最初は、借金の証文か何かだと思った。
一瞬のことで、用紙の内容まで読めなかったからだ。
突き出されて揺れる紙を、じっくりと眺める。
『婚姻届』
彼の国語力に問題がなければ、用紙にはそう記載してあった。
婚姻?
オレとお前じゃ結婚は出来んぞ――そう茶化そうと思ったが、すでに「夫になる者」のところも、「妻になる者」のところも、文字が埋められていたのだ。
カイトと。
ソウマは、紙を乗り越えてカイトを見た。
全身から、パワーと勢いを感じる。
いつもの彼だった。
いや、正確に言えば、ボロボロになる前のカイトと同じ生命体だ。
その生命体を視線で乗り越えると、彼女がいた。
目が合うと、混乱したような表情のまま、ぺこっと軽く頭を下げられる。
ああ。
全部分かった。
分かったやいなや、ソウマは顔が緩んでしまう。
ようやく――彼らは、心を通じ合わせることに成功したのである。
正月明けから、メイが仕事に行っているのは知っていた。
何しろ、その世話をしたのはハルコであり、承諾したのはシュウなのだから、ソウマの耳に情報が入ってこないワケがない。
仕事に行き始めてから一週間くらいか。
それで、この有り様なのである。