冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ほーら、それみたことか。

 以前、ソウマはカイトに言ったことがあった。

 彼の短気な性格を考えれば、本当の恋に落ちたが最後、一秒でも離したくなくなって、すぐに籍を入れるに違いない、と。

 その時は、邪険に扱われただけだった。

 そのカイトが、今は証人の欄に名前を記入して欲しがっているのだ。

 さぁて、どうしてやるか。

 ソウマは、彼らを居間の方に招き入れながら、意地悪を考えていた。

 あれだけ彼らも、ヤキモキさせられたのである。

 特にハルコに至っては、物凄い心配をしていた。

 その時のことを、いまのカイトは、すかーっと忘却の彼方に押しやっているようである。

 貸しにしておいた、2、3発のパンチでは、まだ気がおさまりそうになかった。

「どうしたの…あら!」

 台風が来たのは分かっていただろうが、一体何事なのかまだ把握していないハルコが現れた。

 ソウマは軽くアイコンタクトを送ったが、しかし、こんな突拍子もない事件を、視線だけで伝えることは不可能だ。

 ただ――彼女も、メイを見つけたようである。

 表情が、ぱっと優しい色に変わった。

「元気そうね…」

「あ、はい…あの時は、ありがとうございました」

 女性陣の挨拶を聞きながら、ソウマは居間に入った。

 ソファを勧めるまでもなく、勝手に座るカイト。

 からわかれる隙を見せないようにしている風に思えて、それがまた笑いを誘う。

 メイには、席を目の動きで勧めた。

 少し戸惑った後、彼女はカイトの隣にちょこんと座る。

「とっとと書け!」

 やはり、からかわれるのがイヤなようだ。

 カイトは、とにかく目的を達成しようとしていた。
< 863 / 911 >

この作品をシェア

pagetop