冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「…」
彼が、何も言えるハズがなかった。
スーパーで抱きしめたい衝動を抑えきれず、買い物を中断して、こんなところに連れ込んで、メイを抱きしめているのだ。
変に思われたって仕方がないだろう。
抱きしめるということを、我慢してきた日々があった。
きっと、その反動なのだ。
もう、絶対に我慢なんかしたくなかった。
わがままなのは、百も承知だった。
けれど、腕を離せない。
離せるとしたら――メイの拒絶があった時だけだ。
「カイト……人が来るかも…」
「黙ってろ…」
いま、彼はメイという存在を、この身体で抱きしめているのである。
もっとしっかりと、愛しさの形を感じていたかった。
「えっと…買い物…」
「後だ!」
愛しさとイライラというのは、どうしてこんなに仲良しなのか。
カイトは、その二つにいま振り回されているのだ。
愛しさという精霊は、きっとメイと同じ姿をしていて、イライラという精霊は、カイトと同じ姿をしているに違いない。
言葉の響きと、彼らの様子はぴったりだった。
愛しさの周囲を、まるでロープでぐるぐるにするようなイライラの衝動。
彼の衝動に、まだ全然慣れていないメイを、とにかく自分自身が落ちつくまでずっと抱きしめていた。
買い物の続きは、ずっと後になった。
しかし。
彼女の選んだホウレン草の入った黄色いカゴは、運良く同じ場所に置き去りにされたままだった。
持ち主不明のそれは、さぞや他の買い物客には不審がられただろう。
2人――恥ずかしさが押し寄せてしまって、後は、まったく無言のまま買い物をした。
「…」
彼が、何も言えるハズがなかった。
スーパーで抱きしめたい衝動を抑えきれず、買い物を中断して、こんなところに連れ込んで、メイを抱きしめているのだ。
変に思われたって仕方がないだろう。
抱きしめるということを、我慢してきた日々があった。
きっと、その反動なのだ。
もう、絶対に我慢なんかしたくなかった。
わがままなのは、百も承知だった。
けれど、腕を離せない。
離せるとしたら――メイの拒絶があった時だけだ。
「カイト……人が来るかも…」
「黙ってろ…」
いま、彼はメイという存在を、この身体で抱きしめているのである。
もっとしっかりと、愛しさの形を感じていたかった。
「えっと…買い物…」
「後だ!」
愛しさとイライラというのは、どうしてこんなに仲良しなのか。
カイトは、その二つにいま振り回されているのだ。
愛しさという精霊は、きっとメイと同じ姿をしていて、イライラという精霊は、カイトと同じ姿をしているに違いない。
言葉の響きと、彼らの様子はぴったりだった。
愛しさの周囲を、まるでロープでぐるぐるにするようなイライラの衝動。
彼の衝動に、まだ全然慣れていないメイを、とにかく自分自身が落ちつくまでずっと抱きしめていた。
買い物の続きは、ずっと後になった。
しかし。
彼女の選んだホウレン草の入った黄色いカゴは、運良く同じ場所に置き去りにされたままだった。
持ち主不明のそれは、さぞや他の買い物客には不審がられただろう。
2人――恥ずかしさが押し寄せてしまって、後は、まったく無言のまま買い物をした。