冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□191
 何でこう、落ちつかーねんだ。

 彼女が風呂場の方に消えた後のカイトは、ジリジリ焦がれた。

 動物園のクマよろしく、室内をウロウロしてしまう。

 そういえば、前にこれと同じことがあったような気がする。

 記憶が、彼のシャツの裾を引っ張るのだ。

 あっ。

 思い出した。

 彼女を連れ込んだ、一番最初の時のようだったのだ。

 あの時のカイトは、ワケの分からない気分に焦れていた。

 メイへの気持ちが、一体何なのか分からなかったのだ。

 しかし、似たようなシチュエーションではあっても、いまは全然違う。

 もう、触れてもいいのだ。

 何度も何度も何度も、それを心の中で確認する。

 これからは、ずっと一緒に暮らすのだ。

 だが、完全な自覚にはならない。

 たかが彼女が風呂に行っただけで、こんなに気持ちを持て余すのだ。

 いや、一緒にいた時から落ち着かなかった。

 そのままジリジリとしっぱなしだった。

 あのドアが開いたら、また彼女と出会えるのだ。

 そう思ったら、無意識にドアの方に意識が行ってしまう。

 女の風呂なのだから、きっとそんなに早くはないだろう。

 しかし、横を向いていても。

 背中を向けても――気配を、全部そっちの方面に持って行かれてしまうのだ。

 クソッ。

 本当にどうしようもない状態だ。

 彼女が一緒に生活するということを、誰よりも望んだのはカイトではないか。

 なのに、こんな状態になってしまうなんて。

 ドキッッ!

 そんな時、心臓が飛び出しそうになるくらい驚く事件が起きた。

 いきなり、バスルームへと続くドアが開いたのである。
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