冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□192
 やはり――女の風呂は長かった。

 おかげで30分以上の時間、彼をイラつかせたのである。

 しかも。

「あの…どうぞ」

 ドアを開けて出てきた彼女の姿は。

 ドキーン!!!!

 心臓が握りつぶされそうだった。

 そう、メイは彼のシャツ一枚の姿で、出てきたのである。

 見たのも、これが初めてではない。

 シャツを渡したのは自分なのだから、どういう結果になるかということは分かっていたはずなのだ。

 しかし、正確なビジュアルは想像出来なかった。

 というよりも、想像しないようにしていたというか。

 その不意打ちの現実を、目の前にドーンと置かれたのである。

 シャツの裾から頼りなく伸びた白い脚が、目に焼き付く。

 カイトは、慌てて目をそらした。

 見てはいけないような気がしたのだ。

 シーン。

 重い沈黙が、足元からズブズブとカイトを沈めようとする。

 彼は、それを振り切らなければならなかった。

 メイの脇を通り過ぎて、風呂場に逃げ込んだのである。

 やべぇ。

 脱衣所のドアを閉めたカイトは、深々とため息をついた。

 我慢する必要がないのは分かっていた。

 分かっていたのだが、こんな生活を毎日続けようものなら、本当にどこかで心臓が止まってしまいそうだったのだ。

 きっとメイは、彼をいろんな角度から撃ち抜くに違いないのである。蜂の巣は間違いナシだ。

 とりあえず、今夜すら――どういう風に乗り切ればいいか、カイトはよく分かっていないのである。

 暴れる心臓を無視するよう努力しながら、彼は服を脱ぎ始めた。

 風呂に入らなければならない。

 けれど。

 ゆっくりバスタブなんかに、つかっていられそうになかった。
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