冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そうなのだ。

 これから寝るということは。

 おそらく間違いなく、そういう意味での『寝る』、ということなのである。

 今夜そうなるだろうことは分かっていたのだが、ここまでしっかりと認識していなかった。

 どちらかというと、見ないように横の方を向いていたのだ。

 だが、しかし。

 メイは、あんなシャツ一枚でそこに立っていて。

 赤い顔のまま、カイトを見ているではないか。

 ぴりっと、頬に電流が走った気がした。

 全身が緊張したのである。

 彼は。

 慎重な足取りで、メイの方に向かって歩き出した。

 途中、手の方に神経を裂くのを忘れていたので、タオルがぱさっと床に落ちたが、そんなものに構っている暇はなかった。

 心臓が、喉から飛び出しそうだった。

 まだ、髪からしずくが落ちていく中――彼は、メイの目の前に立ったのである。

 言葉は、やっぱり探せなかった。

 同じように緊張してしまっているような彼女に、そっと手を伸ばすしか出来ないのである。

 手を。

 握る。

 最初に、彼女にそうしてもらった時。

 あの時から、カイトにとって手を握るという行動が、特別な意味を持つようになった。

 手の温度は、彼の方が高かった。

 風呂から上がってすぐなカイトと、時間がたった彼女との違いだろうか。

 その手をゆっくりと引いて歩いた。

「寝るぞ…」

 ようやくその言葉が、出せた。

「…はい」

 消え入りそうな彼女の声。

 そして、どうやって行動を起こしたらいいか分からないうちに、二人ベッドの上に乗ってしまう。

 とりあえず、布団の中に入るのがいいのか。

 それとも、ここで抱きしめたらいいのか――カイトは緊張のあまり、かなり混乱していた。
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