冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 慌てふためいて、カイトの部屋に戻る。

 幸い、彼はまだお風呂から出てきていない。

 ほっとして、ソファに座る。

 そうして、自分の膝を見てしまった。

 シャツの裾から、こぼれているのだ。

 いや、膝だけじゃない。もうちょっと上の腿まで見えている。

 やはり、いくら男物のシャツとはいえ、丈や厚みが頼りなかった。

 しかし、今更シャツを変えてもらうわけにもいかないし、そんなことをお願いしようものなら、また彼が引き出しをひっくり返しかねない。

 結局、カイトの迫力に押されてから、引き出しの中身を片づけていなかった。

 あのままではシワになって、着られなくなるのは分かっていたが、あそこまで念を押されたのだ。

 後から入るカイトに、引き出しを開けて確認されてしまったら言い訳がきかないので、しょうがなく今回は我慢することにした。

 明日、彼が会社に行っている間に、片づけてしまおう。

 多分、アイロンをかけなければいけないだろうが。

 いろんな細々したことを考えているうちに、ドアは開いた。

 ちょうど、意識がそれていた時だけに、不意打ちと同じだった。

 ドキンと心臓が跳ね上がってしまって、その勢いで立ち上がってしまう。

 彼の姿を見ると、余計に心臓が勢いをつける。

 カイトは、パジャマ姿だった。

 しかし、上のボタンは開け放していて、素肌の胸が見える。

 頭にひっかぶっていたタオルを落としながら、彼が近づいてくると―― その胸を、拭いそこねた水滴が滑り落ちるのさえ見えた。
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