冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□194
 メイからアクションがあると、カイトは戸惑ってしまう。

 予測出来ない方向から、爆発が起きるからだ。

 そして、ほぼ間違いなく――彼の核心に突き刺さるのである。

 まさしく、これもそうだった。

「ふつつか者ですけど…末永く…一生…側に置いてくださいね」

 これは2回目のセリフ。

 1回目のセリフの方は、カイトを言語障害に陥れてくれた。

 しかし、2回目のこれは、ニュアンスが違う。

 最初の方は、どこからか借りてきたような言葉だった。

 だから、カイトもどこからかその返事を借りようと、一生懸命奔走したのである。

 今度のそれは、借りてきたものではなく、メイの言葉として語られたのだ。

 彼女の気持ちが、素直に言葉に変わったのだろう。

 その素直な気持ちというのが、カイトを蜂の巣にしたのである。

 一生、側に置いてくれと言うのだ。

 そんなこと!

 頼まれるまでもなく、メイがたとえイヤと言っても、離れるのは不可能だった。

 カイトは絶対にもう彼女を放さない。

 だから、そんな言葉を言う必要はないのだ。

 けれども。

 その言葉が、まるで彼女が。

『カイトの側に、一生いたい』

 と、言っているのと同然のように聞こえた。

 メイの方も、ずっとカイトと一緒にいたいのだと。

 撃ち抜かれる以外になかった。

 同じ気持ちでいたのだ。

 カイトは、彼女にあんな無茶苦茶な結婚を強いた男である。

 そんな自分と、同じ気持ちを抱いているようにさえ思える。

 いや、同じ気持ちでなければ、婚姻届を彼女も書いたりはしないだろう。
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