冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 暖房の効いた暖かい室内の、暖かい毛布の中に沈み込む。

 最初は、メイの体温の方が低く感じたが、その中でぎゅっと抱きしめていると、温度の差がなくなっていくのが分かった。

 自分の体温が、彼女に流れ込んでいるようにさえ思える。

「好き…」

 抱きしめた胸の側で、小さく囁かれる声。

 危険な言葉だ。

 彼女はいろんな危険物を持っているが、その中でも、かなり危険度の高い言葉である。

 言われるともう、本当に彼は愛しさを大放出してしまうのだ。

「あっ…」

 メイが驚いたような悲鳴をあげる。

 ほら。

 やっぱり。

 はっと気づいた時には、彼女を組み敷いていた。

 洗い立ての黒い髪が、白いシーツの上で半乾きのまま光っている。

 好き、だ。

 うまく、もう言葉では言えない。

 昨日、感情が一気にたかぶった時には出せたのに、いまは頼んでも出てこないのだ。

「メイ…」

 しかし、その気持ちを抱えたまま、カイトは彼女に口づけた。

 名前を呼ぶのが精一杯。

 戸惑った唇の感触がする。

 一度離して、もう一度重ねる。

 何度も何度も繰り返している内に、メイは目を閉じた。

 身体からも力が抜けて、前よりももっと柔らかい唇が、彼を受け入れてくれた。

 全部、彼に任せてくれるかのような態度に、かーっと頭に血が巡る。

 しかし、その目がぱっと見開いた。

 突然の大きな瞳の出現に、カイトは驚きに心臓が止まりそうになった。

 その視線が、恥ずかしそうにそらされる。

 伏せられていくまつげというものを、彼はコマ送りで見ていた。
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