冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□3
 オレは酔ってる。

 酔ってるんだ。

 酔ってるから、ランパブの女に。

 悪酔いした――ワケねーだろ!!!!

 カイトは、はっきり分かっていた。

 いま、自分がしっかりと彼女を抱きしめていることを。

 身体が熱いが、意識はちゃんとある。

 何から何まで分かっていた。

「言え……」

 なのに、分からないことがある。

 どうして彼女を抱きしめてしまったのか。

「あ……あの……お客様……」

 しかし。

 腕の中の女は、ひどく困って震えた声で、それを言ったのだ。

『お客様』、と。

 チクショウ!

 イヤだと思う気持ちが、またガンガンに跳ね上がる。

 彼女にとって自分は『お客様』なのだ。

 この女にとって、他の全ての客と同じ扱いということである。

 カァっと、また頭の芯が熱くなる。

 けれども、この腕を離さなければならないこともカイトは知るのだ。

 でなければ、客だという立場を利用して酔ってふざけて抱きつく男たちと、まったく同じになってしまうのであるのだ。

 クソッ。

 気づけば、抱きしめたままこわばっていた、自分の腕をようやくはがす。

 強く抱きしめていたのに、その感触なんか覚えていなかった。

 全然、腕に残らなかったのだ。

 カイトは――彼女の何も抱きしめていなかったのである。
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