冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「あ、早かったですね…」

 座っててください。

 計算よりも、カイトの登場が早かったのに驚いた顔をする。

 途端、あわただしく茶碗やお皿を動かし始めた。

 彼は、乱れた呼吸を繰り返す。

 大慌てで支度をして、とにかくここに駆け下りてきたのである。

 上着とネクタイをひっ掴んだ状態のままだ。

 とにかく、自分の欲望に忠実に、メイに近づこうとした。

 彼女を抱きしめようと思ったのだ。

 なのに。

 トレイに朝食のお皿などを乗せて、彼女が戻って来たのである。

 すごく、忙しそうな動きで。

「もうこれ置くだけですから、座ってください」

 にこにこ。

 笑顔で、カイトを急かしたてるようだ。

 言葉が早口になっているせいか。

「昨日買ったみりん干しもありますよ…おいしいですよ」

 全然、彼の心を気づいていない。

 いまのカイトには、みりん干しなんてどうでもいいことなのだ。

 そんなものを買ったことすら、覚えてもいなかった。

 かちゃかちゃと、トレイをテーブルにおろしたメイは、作業を続けている。

 その身体を、抱きしめようとした。

 座って、朝食を食べさせられてしまう前に。

 トレイの上のものが、全てテーブルに並べ終わられた。

 腕を伸ばす。

 しかし。

「いけない!」

 メイの身体が、慌てて反転した。

 パタパタと、調理場の方に走り去ってしまう。
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