冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
カイトは――手のやり場を失った。
抱きしめるはずだったのに、逃げられてしまったのである。
まさか。
ホントに夢だったんじゃないだろうな!
かっと、苛立ちの血が巡る。
そんなことだけは、あってはいけなかった。
あんなに苦労して結婚までしたというのに、全てが夢オチだったなんて、シャレにもならない。
「お湯かけっぱなしでした…」
自分の失敗に照れたような笑顔で、メイが帰ってくる。
しかし、そのまま自分の席に座ってしまう。
カイトが動けないでいると、きょとんとした彼女の視線が上げられた。
どうかしたのか、とでも聞きたげな茶色の目。
クソッ!
一人、マヌケ面で突っ立っている自分に気づいて、乱暴な動きで席につく。
一番大事なことを後回しにさせられた気分だ。
なのに、メイはにこっと笑った。嬉しそうに。
全然、嬉しくねぇ。
ぶすったれたまま、彼女の作った朝食に箸をつける。
みそ汁をすする。
間違いなく、メイのみそ汁だった。
茶色の瞳が、自分を見ている。
分かっていた。
「うめぇ…」
ちら、とその椀から視線だけ上げて、彼女を盗み見る。
世界で―― 一番幸せそうな笑顔をしていた。
そうじゃねぇだろ!
たかが、みそ汁をうまいと言ったくらいで、どうしてそんなに幸せになれるのか。
それよりも、自分の甲斐性で笑顔を浮かべさせたかったのだ。
何でも欲しいものは買ってやれるのに、いままでお金絡みでそんな顔をさせたことは、一度もなかったような気がする。
これでは、いったいどういう時に、彼女が幸せなのか分からないではないか。
カイトは――手のやり場を失った。
抱きしめるはずだったのに、逃げられてしまったのである。
まさか。
ホントに夢だったんじゃないだろうな!
かっと、苛立ちの血が巡る。
そんなことだけは、あってはいけなかった。
あんなに苦労して結婚までしたというのに、全てが夢オチだったなんて、シャレにもならない。
「お湯かけっぱなしでした…」
自分の失敗に照れたような笑顔で、メイが帰ってくる。
しかし、そのまま自分の席に座ってしまう。
カイトが動けないでいると、きょとんとした彼女の視線が上げられた。
どうかしたのか、とでも聞きたげな茶色の目。
クソッ!
一人、マヌケ面で突っ立っている自分に気づいて、乱暴な動きで席につく。
一番大事なことを後回しにさせられた気分だ。
なのに、メイはにこっと笑った。嬉しそうに。
全然、嬉しくねぇ。
ぶすったれたまま、彼女の作った朝食に箸をつける。
みそ汁をすする。
間違いなく、メイのみそ汁だった。
茶色の瞳が、自分を見ている。
分かっていた。
「うめぇ…」
ちら、とその椀から視線だけ上げて、彼女を盗み見る。
世界で―― 一番幸せそうな笑顔をしていた。
そうじゃねぇだろ!
たかが、みそ汁をうまいと言ったくらいで、どうしてそんなに幸せになれるのか。
それよりも、自分の甲斐性で笑顔を浮かべさせたかったのだ。
何でも欲しいものは買ってやれるのに、いままでお金絡みでそんな顔をさせたことは、一度もなかったような気がする。
これでは、いったいどういう時に、彼女が幸せなのか分からないではないか。