冬うらら~猫と起爆スイッチ~
●196
「こいつは…!!!」


 カイトが、怒鳴っている。

 相手は、彼の同居人であるシュウだ。

 メイは、箸を手放さないまま、この光景を見ていた。呆然と。

「こいつは…オレの…オレの…」

 言葉の最後が、ぐにゃぐにゃに歪む。

 何と言おうとしたのか、分からなくなってしまったかのように。

 カイトの視線が、彼女の方にちらりと向く。

 苦しそうで――カイトの表情こそ、言葉にし難いものだった。

 カイトは立ち上がった。

 そうして、シュウの方にきちんと向き直る。

 落ち着かないため息をついたのが、彼の背中の方から見ていても分かった。

「こいつと…昨日…結婚した」

 そして、彼は言った。

 ドクン。

 メイの心臓が、その言葉で跳ねる。

 昨日のあの出来事、本当だったのだ。

 ウソではないと分かっていたが、改めてカイトの口から出てきて安堵した。

 夢でも幻でもなく、彼らは結婚したのだ。

「そう…ですか」

 シュウは、中指で眼鏡の位置を直しながら反応した。

 しかし、言葉の最後でふっと口元が笑った。

 あっ。

 メイの初めて見る笑顔だった。

 ずっと機械仕掛けのように思えていたのだが、そんな表情も出来るのだ。

 彼も、この事実を喜んでくれているのだろうか。

「てめ…今、笑いやがったな」

 しかし、カイトには嬉しいものには映らなかったようだ。

 顔を歪めて、怒った声を出す。
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