冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 そんな翻訳結果が出そうになった時。

「ごっそさん…」

 言うなり。

 カイトは席を立ち上がった。

 あっ。

 そこで、また彼女は自分に仕事があることを思い出したのだ。慌ててメイも席を立つ。

 たたたっと、テーブルを回って彼の方にかけよる。

 隣の席に引っかけられたままの上着と――

 メイは、ネクタイを取った。

 彼のために、これを結んであげなければならないのだ。

 無用に胸がドキドキしてしまう。

 いままでだって、何度もカイトのためにネクタイを結んだ。

 なのに心臓は、この速度をやめようとしない。

 くるり。

 ネクタイを持って、彼の方を振り返った時。

「きゃ…!」

 驚いて、声をあげてしまった。

 抱きしめられていたからである。

 ネクタイを持ったまま、メイは身動きも取れなかった。

「あ…あのっ…」

 慌ててしまう。

 ネクタイを結ぶことだけに意識を持っていっていたために、完全な不意打ちであった。

 いやもう、いつも不意打ちだ。

 本当に、このタイミングが分からないのである。

 ただ、こんなにまで接触マメな男だとは思ってもみなかった。

 それどころか、彼はいつだったか『結婚しない』とまで宣言したことのある人なのだ。

 なのに――フタを開けたら。
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