冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□21
 バンッッッ!!!

 カイトは、遠慮会釈なく会議室のドアを開け放った。

 勢い余った扉が、反対側の壁にぶちあたって物凄い音を立てるが、まったくもって聞こえていない。

「カイ……社長!」

 後ろから、シュウが大慌てで追いかけてくるが、もう遅い。

 カイトは、社内会議中のメーカーサイドの邪魔を、大いにしてしまったのである。

「ああ、お待たせして申し訳ないが、もうしばらく…」

 バーコード親父が、突然のことに目を丸くしながらも、彼の暴挙を止めようとした。

 しかし、言葉が続いている間にも、カイトはざくざくと会議室を横切って一番奥に向かっていたのだ。

 この会議の決定権を持つ、そのバーコードのところに、である。

 もう、あと一分も待てなかったのだ。

 イライラが、脳天の真下で火山活動を行っていて、自分でもそれを止められそうになかった。

 最初から。

 カイトは、歪めきった顔で、オヤジの顔を睨み付けた。

 最初からまわりくどいことをせずに、こうしていればよかったのである。

 一番てっとり早い方法なのに。

「あと10秒だけ待ってやる…答えは、イエスかノーかのどっちかだ」

 カイトは、指を突きつけるようにして言った。

 本当は、あと10秒だって待ちたくない。
 いますぐ、ほれすぐ答えを出せ言うところだった。

 ワケの分からない会議で、これ以上引き延ばされるなんてまっぴらだ。

「社長…」

 後ろでシュウが、彼をいさめようとするが、止まるハズもなかった。

「し…しかし…」

 目の前の決定権を持つ男も、カイトの強引な話に気色ばんでいる。

「9…8…7…」

 だが、カイトの耳には入らなかった。

 無情にカウントを始めるだけだ。

「ああ、あと10分だけ待ちたまえ…それで決定を!」

「…6…5…4…3…2…」

 カイトは、0.1秒もよどむことなく、カウントを下げていく。
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