冬うらら~猫と起爆スイッチ~
□
「そんな…」
冗談もほどほどに。
そういう冷や汗の感触が目の前から伝わってくる。
勿論、カイトは聞いちゃいなかった。
「…1…0」
カイトは、ついにカウントを終えた。
バーコードを見るが、こういう事態は初めてなのか、固まったままだ。
背中を向けた。
「決裂だ…帰るぞ」
イエスもノーも、自分の判断で決定を下せない管理職相手に、取引をする気にもならない。
彼は、惜しげもなかった。
シュウを見もせずに投げ捨てるように言う。
そうして、カイトはネクタイを緩めながら、大股で出ていこうとした。
もう仕事は終わりだ。
チッ。
なのに、舌打ちが止められない。
頭の真下で、まだ燃えさかるマグマが溢れ続けているのだ。
いまなら、どこにでも飛び火して、延焼させてしまいそうなくらいだった。
「ま…待ちたまえ!」
冷たい背中に向かって、声が投げられる。
しかし、カイトは足を止めなかった。
ガツガツ靴底が音を立てる。
靴音が変わった。
会議室の床と、廊下の床の材質が違うせいだ。
「わ、分かった…そちらの要求で、契約しよう」
ため息とともに吐き出された言葉に、ようやくカイトは足を止めた。
しかし、すぐには振り返れなかった。
しかめっ面のまま、緩めかけたネクタイを、元に戻すことから始めなければならないのだ。
そうならそうと、さっさと答えやがれ!
毒づく心をそのままに、ようやくカイトは踵を動かした。
クソッッ。
しかし、契約が自分の思い通りの条件になったというのに、そのイライラは、全然彼の中から巣立っていかなかった。
「そんな…」
冗談もほどほどに。
そういう冷や汗の感触が目の前から伝わってくる。
勿論、カイトは聞いちゃいなかった。
「…1…0」
カイトは、ついにカウントを終えた。
バーコードを見るが、こういう事態は初めてなのか、固まったままだ。
背中を向けた。
「決裂だ…帰るぞ」
イエスもノーも、自分の判断で決定を下せない管理職相手に、取引をする気にもならない。
彼は、惜しげもなかった。
シュウを見もせずに投げ捨てるように言う。
そうして、カイトはネクタイを緩めながら、大股で出ていこうとした。
もう仕事は終わりだ。
チッ。
なのに、舌打ちが止められない。
頭の真下で、まだ燃えさかるマグマが溢れ続けているのだ。
いまなら、どこにでも飛び火して、延焼させてしまいそうなくらいだった。
「ま…待ちたまえ!」
冷たい背中に向かって、声が投げられる。
しかし、カイトは足を止めなかった。
ガツガツ靴底が音を立てる。
靴音が変わった。
会議室の床と、廊下の床の材質が違うせいだ。
「わ、分かった…そちらの要求で、契約しよう」
ため息とともに吐き出された言葉に、ようやくカイトは足を止めた。
しかし、すぐには振り返れなかった。
しかめっ面のまま、緩めかけたネクタイを、元に戻すことから始めなければならないのだ。
そうならそうと、さっさと答えやがれ!
毒づく心をそのままに、ようやくカイトは踵を動かした。
クソッッ。
しかし、契約が自分の思い通りの条件になったというのに、そのイライラは、全然彼の中から巣立っていかなかった。