冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 何だ、おめーか――カイトは、すげなくそう反応しようとした。

 が。

 ハルコの後ろから、ひょこっともう一つの影が出てくる。

 引っ張られるようにして、前に出されているのだ。

 ――!!

 心臓が、止まるかと思った。

 カイトは目を見開いて、自分の脳裏にその映像を焼き付けてしまう。

 黒い、脚。

 いや、ストッキングの脚だ。

 白い暖かそうなスカートの裾。

 くびれたウェスト、胸のふくらみ、細い肩、首、綺麗な顎の線、赤い唇、白い頬、黒い髪――茶色の、目。

 誰だ…こいつ。

 カイトは、呆然とそれを思った。

 また、彼の知らない女が現れたのだ。

 ケバイ化粧だった。
 すっぴんになったのも見た。

 しかし、いまいる女はまた違うのだ。

 薄い化粧と、艶やかな唇。
 綺麗にウェーブのついた、やわらかそうな髪。

 彼に見られているということで、伏し目がちに頬を染めている。

 何もかもが。

 何もかもが、大問題だった。


 カイトは――完全にタマシイが抜けてしまった。
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