貴方の想い運びます
カランコロン...
入り口のドアを開けると店内に可愛らしい鈴の音が響いた。
「いらっしゃいま...ってなんだ。懍さんか。お帰りなさい。」
この店の人であろう青年が懍に声をかけてきた。
青年はおそらく自前だろう少し濃いめの茶髪を短くしており、活発で明るそうな印象を受けた。
「お前なぁ、なんだってなんだよ。失礼な奴だ。ちょっとあの部屋使うから、なんかあったら呼んでくれ。」
「了解しました~...あっでもその前に相談したいことがあるんですけどいいですか?」
「あ~...文佳、時間とか大丈夫か?」
「あっ、私のことでしたらお構いなく。」
「あれ?」
ここで初めて懍と会話していた青年は文佳の存在に気づいたようだ。
目が合った文佳が焦りながらお辞儀をすると、青年はとても人懐こい笑顔を浮かべた。
「こんにちは。」
「こっこんにちは。」
「文佳。」
「っ!!はい!!」
「そんなに驚くことないだろ。すぐ済むからそこの椅子に座って待っていてくれ。」
「わ、分かりました。」
文佳が大人しく座ったのを見届けると、二人は中央にあるカウンターのほうで何か話始めた。