不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生
俺はもう一度コンパクトの文字を見詰めた。


あの日試した鏡面回顧。
もう一度やってみるしかないようだった。


俺はこっそり陰でコンパクトを開け、あの文字を見詰めた。


その途端に又閉めた。

鏡面に邪悪な何が取り憑いたような圧倒的な力を感じたからだった。




コンパクトは力を増していた。

死化粧を……みずほの最期の化粧を……俺はみずほの顔をこのコンパクトで飾った。


俺の思いとみずほの思い。

そして死化粧をしてくれた納棺師の思いが一つになって……


でも本当にそれだけだったのか?


それなら良いのだが。


俺は垣間見た邪悪な何かがとても恐ろしくて仕方なくなった。
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