それでも朝はやって来る
離された体の間に冷たい風が通り抜けた。



悠里は下を向いて、じっと絶えているようにも見えた。

肩に添えられた手が、少しだけ震えていた。




あ……




朝子の目の中に一気に涙が溢れてきた。



悠里…

…やだった……よね……



涙が瞳から溢れでそうになっていると、掴まれた肩に力が一層こめられた。


「………いたっ」


あまりにも強く掴まれた腕が少し痛った。

朝子の声で我に戻ったのか、驚いた顔をして悠里は手を離した。


「怪我は?大丈夫なのか!?」


慌て朝子の顔をのぞきこみむ。


「…大丈夫」


朝子は複雑な気持ちに蓋をしながら、あやふやに悠里に微笑んだ。


「えっと……、真楯先生が『手当て』してくれたから、大丈夫」

「…手…当て?」


まじまじと朝子の両手を眺めていた。


「傷…治ってるな…」


訝しげに首を傾げて、納得がいかない様子だ。


「手当てって、あいつはいったい何を…したんだ?」


朝子は先程までの真楯とのやり取りを思い出して、頬が火照るのがわかった。


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