それでも朝はやって来る
赤くなった朝子の表情を見てさとったのか、悠里はグッと両手の拳を握りしめた。


「…………せたのか?」


奥歯を強く噛み締めながら、唸るような声で悠里が呟いた。


「真楯に触らせたのか!?」


今まで聞いたことがないような低く威圧するような怒りに満ちた声だった。


ビクッと体が硬直するのがわかった。

全身の毛が総立ちになり、全神経が悠里に集中した。


「あいつ、俺の『モノ』に断りもなく触りやがって…」


悠里の瞳がゆっくりと深紅に変わっていった。


「絶対許さねぇ…」


今にも真楯が眠る二階へ駆け上がっていきそうな悠里を、朝子は止めた。


「先生は手当てしてくれただけだから…」

「手当てって………、お前は嫌じゃなかったのかよ」


吐き捨てるように問いかけられた。


「治療って名目で、キスされたんだぞ。なんとも思わなかったのかよ!」


こんなに悠里が怒る理由が、朝子にはわからなかった。

自分の所有物を勝手に触ったのが許せないのだろうか…

真っ赤な目は怒りで、更に紅さを増していた。




それはまるで………


治療したことを怒っているのではなくて…


キスをした真楯に嫉妬してるみたいに聞こえて…


自分を好きだと言われてる様で…



「クソッ!!そんな顔して、真楯にキスさせたのかよ」



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