それでも朝はやって来る
「眼鏡ないと全然見えないみたいだね。これは何本?」


桜小路が見えるように、ギリギリまで顔を近づけて、人差し指を立ててみた。


結構な至近距離だったので、さすがに見えたようだ。


顔を真っ赤にしながら、消え入りそうな声で一本と答えた。



あ、ヤバ……

何…この、可愛さ……



頬を薄紅色に染めて、大きな瞳は焦点が合わないからか黒目がちで、少し潤んでいてとても可愛らしかった。


声は鈴の音のように高く弱々しい。


いわゆる典型的な少年漫画に出てくる守ってあげたいと思わせる女の子だ。




あたしとは、全然違う…………




桜小路を見詰めながら、朝子は自分にはない女の子らしさに羨ましさを覚えた。




これぐらい可愛ければ、悠里は始めから優しくしてくれただろう…


キスだって、思い出に残るような素敵なものにしてくれたに違いない。



可愛ければ、藤咲先生がいたって悠里に振り向いてもらえたかもしれない…


もう少し、可愛いげがあれば…



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